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「言っておくけど、私はあなたみたいな人、大嫌いだから」
衝撃的な言葉だった。
万人に好かれる人間などいないことはわかっている。しかし、こうも面と向かってハッキリと嫌悪の意思表示をされる人間もそうはいないだろう。
ましてや、藍李は他人の心に敏感で、人から嫌われるような行為はしてこなかったつもりだし、これまでここまで嫌われたこともない。
それは言われなかっただけで、本当は自分はそんなに他人に不快感を与えるような人間だったのだろうか。
「姉貴、姉貴!」
「え……」
「何ぼんやりしてんだよ? 姉貴から一緒に飯食おうって言ってきたんだろ?」
言葉は素っ気ないが、その表情を見れば心配していることはありありとわかる。
藍李は弟の顔を見て、気を取り直したように笑った。
「ごめんごめん! ぼーっとしてた」
「……仕事、忙しいのかよ?」
「悠馬ほどじゃないよ。制作部に異動になってからSEさんの大変さは目の当たりにしてるから、ホント悠馬のやってることってすごいなぁって感心してる」
「姉貴の仕事も大変だろ。大変の種類が違うだけだ」
急に褒められたせいか、照れた顔を隠すようにそっぽを向く悠馬に、藍李はメニュー表を渡す。
弟の悠馬はシステム会社でSE(システムエンジニア)をやっているのだ。
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