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「須王が、このチームのディレクターにはぜひ神城さんをって推してるんだ」
「……はい?」
ますます訳がわからない。
藍李は入社時からずっと総務部に所属している。総務部は会社内ではいわばサポート部門を担う。
営業や制作は前線部門で、直接的に会社に利益をもたらす部署だ。こちらが攻めとすると、総務は守り。ずっと守りの部署にいた人間を攻めの部署に推すなど、よほどのことがない限りありえない。
藍李は総務部での仕事に満足していたし、異動を願い出たこともなかった。
「君と須王は同期だっていうし、リーダーの須王が推すならってことで、僕が総務部長に無理にお願いしたんだよ」
「……」
確かに須王とは同期だ。しかし、それ以外に接点はない。
須王は営業部のエースで、売上は常にトップクラス。リーダーシップもあり、上司部下問わず信頼も厚い。
片やエリート、片や平々凡々な一般社員。
同期の中では須王を狙う女子も多かったが、同期会と称して行われる合コンにも藍李は参加したことがなかった。
唯一は、入社当日に行われた飲み会だけだ。
藍李がどんな人間で、どんな能力があるのか、そういったことを須王が把握しているわけがない。
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