4530人が本棚に入れています
本棚に追加
「部長は社のためならと、大事な戦力である君を手放す決心をしてくれたんだ」
沈黙を肯定を捉えたのだろうか、七瀬が後を続けた。
「ちょっ……」
「いやいや、大型案件に関われるなんて滅多にないからね。神城君にとってもいい話だよ」
「本当にありがとうございます。ほら、須王もちゃんとお礼を!」
自分の意思を主張できず、どんどん話が進んでいくことに焦りを覚え、藍李は須王の方を見た。
(冗談でしょ!? 間違えましたって言ってよ!)
必死に訴える藍李の目を見据え、須王は僅かに口角を上げる。
そしてすぐに総務部長に向かって端正な顔をふわりと和らげ、深々と礼をした。
「感謝しています、総務部長」
営業部のエースである須王に深く頭を下げられたことで、総務部長は上機嫌になる。須王の肩をポンポンと叩きながら「君がリーダーなら安心だよ」などと笑っていた。
藍李はその様子を眺めながら、何とか断れないかと策を巡らせる。しかし、焦りもあってなかなか妙案が浮かばない。
更に焦っていると、それを読んだかのように須王が話をまとめてきた。
「総務部長、それでは神城さんも異動を了承した、ということでよろしいでしょうか?」
「え……」
最初のコメントを投稿しよう!