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小さな子供は純粋だから、穢れを知らないから、そんな大人には見えない何かを見ることもあるのだろう。
そんな風に姉や母は笑っていたが、まだ当時中学生だった私には正直気味が悪かった。
甥ではなく、甥が見ているモノの正体が分からないことが、だ。
多感な時期のオトメだった私は、薄暗くなった墓地の前を通る度、不意にそれを思い出しては目を逸らし、足を早めたものだった。
そんな「ジブ」の正体が分かったのは、本当に偶然のことだ。
ある日、「ジブがなんなのか分かった!」興奮した様子で姉から電話がかかってきた。
姉の話によれば、友達から貰った飾り物を部屋にかけたところ、甥がそれを指差して「ジブ!」と叫んだのだそうだ。
それは、人間の全身骨格標本――つまりガイコツだった。
良くできてはいるが、大人の手ほどもないそれを甥は酷く嫌がり、姉は結局、甥の目に触れないようしまいこむしかなかったと、笑っていた。
――そうか、ガイコツか。正体が分かって、私も確かにすっきりはした。
だが、全身に立った鳥肌は中々鎮まらない。その時、何よりも私が怖かったのは、死の意味すら知らない――墓地とガイコツなど結びつけようもない幼い甥が、心底おびえて泣いていたことだった。
幽霊でもなく、何か分からない曖昧模糊としたものでもなく、ガイコツ……
それが私には堪らなく恐ろしかったのだ。
やがて甥はジブと口にすることもなくなり、高校生になった今では、そんなことがあったことすら覚えていない。
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