深夜の個人タクシー

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 男性の姿が見えなくなる場所まで車を走らせてから、停車させました。 「ラッキ?!」Kさんは喜びました。酔っ払いがお金を多く払って「釣りはいらないよ」と言ってくれることは時々ありました。今回は少し変則的ではありましたが同じパターンだと思い、そのまま自宅に戻りました。  Kさんが自宅に入った瞬間、テレビを観ていた奥さんが突然胸を抑えながら苦しみだしました。 「どうした!」  奥さんの顔はみるみるうちに白くなり、唇は紫色に変色。  慌てて奥さんをタクシーの助手席に乗せて近くの病院に行きましたが、夜間の診療をやっていませんでした。守衛さんから救急を受け入れている病院名を聞き出すと、法定速度を大幅に超えながらそこに直行しました。  ようやく病院が見えてきた時、奥さんは「あれ? 治った・・・・・・」とつぶやきました。 「え? ホント?」Kさんは車を止めて奥さんの顔を覗き込みました。 「・・・・・・なんともない」奥さんはケロッとしています。  今、目の前にある病院が、最後に乗せた客に頼まれていた場所であることを、Kさんは奥さんには黙っておくことにしました。そして奥さんの首に後ろから手で締められたような跡が残っていることも・・・・・・。  病院の入口を見ると、誰もいないはずの自動ドアが勝手に開いて、閉じました。
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