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ミケはゆっくりと起きあがると目をこすった。
おはようさん、とザクセンが片目をつむる。ミケもああ、と返すと、寝台に腰掛けたままここに呼ばれた理由を聞いた。
「俺に用があるんじゃなかったか。まさか抱き枕にするために呼んだわけじゃないんだろ」
「まあそれもある。口も借りたいしな」
「お前なあ……本題のあとにしてくれ」
悪童のように、にししと空気をもらしてザクセンは笑う。だがそのすぐあとに声のトーンを落としてミケの顔を真剣な表情で見つめた。
つられてミケも姿勢を正す。
「実はな、人間の姿をした魔物がいるって話があるんだよ」
「まさか、冗談だろう?」
ミケは驚いて声をあげた。
人の姿をしている魔物は、まったく見たことがない。
魔物はたしかに組織や構造が人間と似通っている部分はあるが、どれもが人間にありえない骨のつきかた、パーツのつきかたをしている。
顔だってあるほうが珍しいし、顔があっても目は三個以上ついていたり、口だけしか開いてなかったりするのは当たり前だ。
人間と変わらない姿の魔物だなどと、本気だろうか。
「幸か不幸か、襲われて生き残っちまったやつの証言によると、どうも子どもの姿をしてるみたいでな」
「子どもだと」
「そ。そいつが問答無用で強姦してきたらしい。笑い事じゃねえけど、ちょっと信憑性がアレだよな」
話を聞くだけでは眉唾もいいところだった。だがそれを相談してくるということは。
「ザック、お前には、本当に人型の魔物がいるかもしれない根拠があるんだろう?」
「そうなんだよ。襲われた場所が場所でな。どうにも国内の自宅だったって言うんだよ。迷子らしい子どもを保護したら襲われて、声をあげようとしたら誰にも聞かれない場所に行こうっつって連れていかれて。で、ここから古城側に向かった森のど真ん中で、気がついたら精液まみれだったらしい」
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