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こいつら野次馬は、なんでババアが殴られるのか、そんな理由はどうでもいい。
若い男が年寄りを殴った!酷い!それだけだ。
派手な事件を面白おかしく拡散出来ればそれで良いんだ。
それに店員が来て警察に通報されたらどんな理由だろうがアウト。
このババアは殴られて当然の事をしているのに俺の方が悪者になる。
俺は胸ぐらを掴んだ手を突き放し、スマホで写真を撮ろうとしている野次馬を睨みつけ、わざとゆっくり歩いてその場を去った。
次の日、木下のボクシングジムに行き、コンビニでの事を話した。
「嘘だろ?」
木下がパンチングボールを叩きながら振り返りもせずに言う。
「マジだよ。あのババア、絶対わざと嫌がらせしてやがる」
俺は近くのベンチに座って拳を掌に打ち付けた。
「そんな嫌がらせされるほど酷い事をしたんじゃあないのか?」
「電車で席を譲らなかっただけだぜ?そんなの理由になるか?」
「本当にそれだけか?よく思い出してみろ」
木下はパンチングボールを止めて振り返って尋ねる。
「何にもしねーよ、一言注意しただけだよ」
「注意しただけで流石にそれほどしつこくはされないだろう」
縄跳びを取り出し、その場でステップを踏む様に飛び始める。
「逆恨みだよ。なんか気持ち悪いババアでよ、狂ってんだよアレ」
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