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縄は徐々に高速になり、床を打つ音だけを残して姿を消した。
「……なあ、今度は止めんなよな」
自転車の時に殴っておけば、コンビニでの嫌がらせは無かったかもしれない。
俺は木下に釘を刺した。
「それよりお前もジムに入れよ。その攻撃性を違う方向へ向けろ」
木下のはぐらかした返事が返って来る。
「それよりじゃねーよ。おめーだって同じ事されたら絶対殴るだろ」
その言葉に木下はピタリと縄跳びを止めた。
「俺は素人は殴らない」
そして今度は移動してサンドバックを叩く。
「だからって俺が殴んのも止めんなよな」
俺もベンチから立ち上がって木下の後ろに立った。
「ボクシングをやれば殴り放題殴れるぞ」
「んなだりーの俺がやるわけねーだろ」
「ならなんでジムに来るんだよ」
「見学だよ、見学」
木下が振り返り、ふっと笑ってまたサンドバックを叩いた。
数日後、細い道を歩いていると、何かが一瞬視線を遮り、すぐ足元で何かが砕けた。
それの破片が足にぶつかり反射的に飛び退く。
地面に砕けたそれは、土がしっかりと入った鉢植えだった。
「……あぶねぇ」
上を見ると、非常階段の三階から顔を覗かせている奴がいる。
「あのババア」
距離は遠かったが、はっきりとあの嫌がらせババアだと分かった。
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