公衆電話

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 一人で抱え込むのも辛かったので、Aという後輩にこの話をした。  Aはオカルト好きで、是非止まりたいと言い出した。俺としても一人より二人の方が心強い。その日からAはうちで寝泊まりするようになった。  そして何日目かの真夜中。電話のベルが突然廊下に響いた。 「来たっ」  Aは俺の制止も聞かずに部屋を飛び出していった。追いかけねばとも思ったが、怖さが勝ってしまった。耳だけを澄ます。階段を駆け下りる音、そして恐らく受話器を乱暴に外す音。コール音が止まり、代わりにAの声が廊下に響く。 「もしもーし……えっ?」  そして、唐突に静かになった。  僕は恐る恐る部屋を出て、階段を半分ほど降り、階下を覗き込んだ。  そこには誰もいなかった。ピンク電話はいつもと変わらずそこにあったが、受話器は外れていない。 「A?」  俺の声が、虚しく廊下に響く。忽然と、彼は姿を消してしまったのだ。  あの日以来、Aの姿は見ていない。連絡もない。聞いた話では、住んでいたアパートからも姿を消したらしい。  ピンク電話はあいつが姿を消した翌日に撤去された。  それと同時に俺は夢を見るようになった。電話が鳴る。それに出ると、受話器からはAの声が聞こえてくる。  その声は少しずつ大きくなってきているようで……。
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