夏のともだち

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 夏休みは毎年、お母さんの田舎に帰っていた。 山に囲まれていて、寂しいところだったけど家は昔ながらの日本家屋で立派なものだった。子どものころの僕は縁側が特にお気に入りで、眠くもないのに横になって、よく入道雲の立つ青空をぼんやり眺めたりした。  そんな時決まって、庭から忍び込んで僕に会いに来てくれる友達がいた。今となっては名前はもちろん、どんな顔をしていたのかすらもぼんやりとしか思い出せない。でも、遊びに来るとき彼は、いつでも裸足でそのうえ、腿の辺りまでびしょびしょに濡れていた。 だから今でも半ズボンから伸びた真っ黒に日焼けした彼の両足だけははっきりと思い描くことができる。
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