てっきん

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 だから、練習と楽器の片付けが終わった小学生達は、水飲み場に一直線だった。だけど、練習に必要な譜面台、それを片付けないままの子が半数は居た。  そこで、音楽教師。自分はピアノの片付けや窓締めをするからと、残りの譜面台片付けを、一人の生徒にやらせた。水飲み場へ向かうのが遅れた、おっとりめの生徒にやらせたのです。そして、その生徒は真面目に用事をこなした。しかし、最後の何台かを音楽準備室に運んだ後、暑さと疲れで倒れてしまう。  本当なら、その音で教師が気付くべきだった。だけど当の音楽教師は、施錠を済ませたら水飲み場に真っ直ぐ向かった。そこに居る生徒達を追っ払って、準備室を覗きもせずに、学校から離れた。倒れた生徒が、音楽準備室に残されたままだったのにも関わらず。  共働きの保護者が子供の不在に気付いた時は既に手遅れで、倒れたまま放置された子は熱中症で亡くなっていた。それ以来、音楽室の辺りからは、その時練習していた曲が流れてくる様になったと言う。それも、明日を奪われた子が担当していた鉄琴で、明日と訳せる曲が。  それは本来明るい曲である筈なのに、とても悲しく音楽室の周辺に響いたそうだ。
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