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それからしばらく変わらない日々が続いていた。
いってらっしゃい。
そう言って夫を見送って何気なくポストをあけた。
ポストをのぞくと真っ赤な文字で書かれた宛名のみの白い封筒。
そこには、インターネット掲示板の大量のプリントアウトが入っていた。
読み進めていくと、私の正体について。知っているという書き込みから、私の過去について、延々と綴られていた。
私の正体を知っている?
SNS上のコメントの書き込みが頭をよぎった。
まさか。
封筒の中をのぞくと、一枚の名刺が入っていた。
名前とフリーメールのアドレスだけが綴られただけの「名刺」
郵便ではない、直接投函。
住所を知られている。
その事実に愕然とした。
名刺の裏側には、こう書かれていた。
「10年前の事件について知っている。」
と。
私はそれをみて身の毛がよだつ記憶を思い出した。
あの日のことは務めて忘れるようにしてきた。
私はそのために、舞妓さんとしての夢を失くしたのだから。
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