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それから半年が過ぎた。
先輩の住んでいたマンションはまだそこにある。
たまに最上階の一部屋だけ電気が点いている事がある。
まだ退居していない人がいるのか。実に不気味だ。
ある夜、先輩が俺の部屋に遊びに来た。なんだか酷くやつれている。
二人で座って酒を飲む。
「マンション、なかなか壊されませんね」
「早く壊してくれないかなぁ」
そう言いながら、先輩は窓から見えるマンションに目を向けた。
「あっ」
目を見開いて叫んだかと思うと、窓から遠ざかるように這いずり、そのまま背を向けて震えだした。
「どうしたんです?」
「で……電気が……、また、電気が点いてる!!」
振り返ると、確かにまた一部屋だけ電気が点いている。
「まだ退居していない人が……」
「あそこは、俺の部屋だ!! 俺の部屋だったんだよ!!」
先輩は絶叫した。振り返った先輩は真っ白な顔をして、目は血走っていた。息を荒げ、憎々し気に向かいの部屋を睨みつけている。
「見てるんだ……。あいつが俺を……俺を見てるんだよ……」
「あいつって……」
「知らねぇよ!! でも、俺の事見てんだよ!! ほら、今も!!」
窓を指さす先輩。だが、その先のどこにも人影は無い。
「誰も……いないですよ?」
「嘘つけ!! いるだろうが、いるんだよ!! いるんだぁぁぁ!!」
先輩はわめき散らし、そのまま靴も履かずに部屋を飛び出してった。慌てて追いかけたけど、なぜか先輩はどこにもいなかった。
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