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最初のページに貼られた写真。色あせ、形も崩れてボロボロになっている。表面には幾筋か縦横に折り目がついているものの、何が写っているのかははっきりとわかった。神社のような建物を背景に、男が一人。
その男は、私にそっくりだった。呆然とそれを見つめる私の周りに、なになにと言って人が集まってくる。
「私もそれ見たときはびっくりしたわよ」
座布団に座ったままの伯母が口を開いた。
「その写真ね、おじいちゃんが肌身離さずずっと持っていたもんなんよ。お守り袋に入れて。寝込むようになってから、それを私に見せて何か言うんやけどね、ほら、言うてることがわからへんやろ。せやから結局それが誰なんか、聞けずじまいやったわ。でもアルバムの最初のページが空いていたから、とりあえず貼っておいたんよ」
「若いころのお祖父ちゃんじゃないの?」
小さいころに似てると言われたことを思い出し、そう言ってみた。しかし伯母は首を振る。
「それが違うんよ」
彼女はアルバムを指さしながら、
「ほかの写真見てみ」
言われて一枚めくる。学ランを着た祖父らしき青年の姿があった。確かに私と似てはいるが、さっきの写真とは別人だ。ページをどんどんめくっていく。写真の中の祖父は徐々に歳を重ねていき、やがて見覚えのある姿になった。しかし、最初のものと同じ人物はどこにも写っていない。
と、そこで気づいた。おや?と思いながらページを戻る。幼少期の祖父の写真が見当たらないのだ。
「お祖父ちゃんって、小さいころの写真がないんだね」
誰にともなく言うと、父と伯父が何か言いたげに視線を交わした。伯父が、お前がしゃべれとでもいう風に顎をしゃくると、父が私に視線を向けた。
「お前には言ってなかったがな、あの人は養子だったんだ」
自分がそうだと言われるほどではないが、それでも驚きで言葉が出ない。
「ちょうどお前の息子くらいの年齢のころに、この家に来たそうだ。聞いた話によると、迷子だったとか。この村をふらふら歩いているところを保護された。記憶が混乱していて、身元もなにもわからなかったので駐在が扱いに困っていたところを、見かねた祖父さんが引き取って自分の子供にしたらしい」
彼が言う祖父さんとは父の祖父のことだ。つまり私の曽祖父だ。
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