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それが、夢の出来事だったのか…現実だったのか。今でも定かではありません。
それは、まだ暑さが残る八月の事でした。
その日はバイトもなく、部屋で扇風機を回しながらぼーっとしていました。
暑さのせいで、少し意識が朦朧としていたような気もします。
自分の部屋なのに、なぜか違和感を感じていました。何にと言われても困るのですが、何かに見られているような…そんな感覚です。
あたりを見回しても、誰もいない。
それでも、やはり誰かに見られているそんな気がしていました。
小さなアパートのこの部屋には、隠れ場所なんかありません。
まぁ、気のせいだろうと思いながらも少し恐怖もあったせいかつい声を上げていました。
「うちには、何もないぞー!」
誰も聞いてないのは、わかっていましたがついそんな事を言っていたのです。
その僕の言葉のせいだったのかもしれません。
「……ある…わよ……。」
か細く、小さな声が響くのです。
「貴方…が……いるもの……。」
「っ!!!!」
声と同時に、僕の上にその女の人は乗っていたのです。声も出せず、動けない僕の上にまたがりゆっくりと確実に僕の首を絞めるのです。
息苦しさと、恐怖。
声を、
声を、
声を、
叫べない自分を奮起するように!
何度も、言葉を心の中で叫びました。
「や、やめ…ろ!!!」
声が出た瞬間、僕は目が覚めたような感覚に襲われました。そして、部屋には僕しかいませんでした。
さっきのは、夏の暑さが見せた夢だったのでしょうか。
確かなのは、僕の首に残る赤い手の跡。
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