第1章

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体調を崩して会社を休んでしまった。 明日から3連休なので、実質4連休になってしまう。 一人旅の計画とか、気になる所の探検とか、あれこれ考えていたのに。 全てを白紙にして、体調復活のための連休になってしまった。 しかたがない。 体がSOSを出しているんだから、助けてあげないと。 やりたいことも行きたい場所もいっぱいあるんだもの。元気じゃないとなにも出来ないからって自分に言い聞かせて、ベッドにゴロリと転がった。 でも、実際は元気でも大したことはしない気がする。色々なことが面倒で、体より心が疲れていた。 「いいお天気だなぁ。お布団干したいなぁ。いや、休まないとダメ!今日は何もしない」 シャッ! 窓から見えるキラキラの青空を見なかったことにして、カーテンを引いた。 体は正直で、具合の悪さから逃げるようにすぐに睡魔の誘惑に負ける。 外の車の音や鳥の声は聞こえているのに、眠りの世界へ入っていく感覚。 キーンと高い金属音が頭の中で小さく響いている。 「あ、これは熱が出てきているな」 どこかの細胞がまだ起きていて警鐘を鳴らしているけれど、もう引き返せない。 私は、そのまま眠りの国の住人になってしまった。 深い眠りのはずなのに、夢を見た。 まるで眠れずに起きてしまったような、夢なのか現実なのか曖昧な感じ。 ただ、部屋が模様替えをする前の状態だったので、夢だとわかる。 「これは夢だ」と思いながら見る夢。 現実の意識があるのに夢の中の意識もちゃんとあって、二重人格みたいだと思う。 「この棚の位置を変えないとだめか」 これ、部屋の模様替えをした時の夢だ。 私は、棚から本や小物を順番に段ボールに詰めていく。 「あ!」 時計を落としてしまった。秒針が外れて、カバーの中でカラリと悲し気な音を出す。 「あ~、やっちゃった・・・。直せるかなぁ」 ため息をつきながら、その時計も段ボールに入れた。
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