第1章

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そっと蓋を取ると、そこには夢と同じボールペンが静かに横たわっていた。 「あるじゃん・・・」 安心して泣きそうになる。 ボールペンを取り出し、さっきまでいた夢の世界を思い出す。 青いアルバムは存在しない。 きっと、この青い宝箱から連想して生まれたものだったのだろう。 ただ、あのアルバムにはとても大切なことが書いてあった。 今の私に必要な言葉。 お気に入りの猫の付箋に、夢で見たメモと同じことを書いていく。 『言葉にする』『行動する』 この二つだけで十分だ。 あれもこれも詰め込むと、それがストレスになって結果何もできなくなる。 「何をしようか。やりたいことはいっぱいあるのよ!慌てない。順番にやろう。楽しくなくちゃやる意味はないんだから。楽しむための調べものもいいな。図書館に行こうかな」 時計を見ると、もう午後の2時を過ぎていた。 「ウソ!そんなに寝てたの?5時間も!?」 たっぷりの睡眠で、頭がすっきりしている。どうやら熱も下がったようだ。 カーテンを開けると、午後の陽射しが部屋を明るく照らす。 グ~ 盛大にお腹の虫が鳴いた。 「やだ」 最近は食欲もなかったのに、体は正直だ。心に力が湧くと体も連動して力を欲しがる。 「腹が減っては戦は出来ぬだよね。まずはご飯にしよう」 猫の付箋をボードに貼り、「よし!」と頷いてキッチンに向かった。 『言葉にする』『行動する』 緑色の字をもらった猫は、どこか誇らしげな顔をして「ニャ~」と鳴いた。 それを私は知らない。 知っているのは、宝物の緑のボールペンだけ。
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