十月十五日――邂逅

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「アケルくんッ?」  影を追って走り出す。  紙飛行機のような影は、スーッと飛び続ける。まるでエリコを導くように。風の乱れたビルの間を、確かな軌道で、迷うことなく飛んでいく。  ――待って!  見失わないように、エリコは走った。就職活動用のパンプスに苛立ちながら、懸命に紙飛行機を追いかけ、そして。  ふいにあらわれた黄色の中に、紙飛行機は消える。  ――博物館……?  黄葉したイチョウにかこまれたそこは、あまりにも静かだ。まるで、そこだけが浮いてしまっているかのように。  そこから先に、なにかを秘めているかのように。  ――ここになにかあるの? アケルくん……  敷地の中へと歩き出したエリコは、掲示板の前で足を止めた。ポスターによると、現在開催中のテーマは「宇宙を目指した人々の歴史」のようだ。  そして、目玉となる展示物は、昨年月から持ち帰られた品数点。 「月の……」  エリコの足は自然と、エントランスに向かって速まる。  その耳は、今はいるはずのないセミの声を聞いていた。
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