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1曲目のイントロが流れ始める。ベースの音ってこんなにハッキリ聴こえてたっけと思いながら押入れのドアを開ける。洋間だから本当はクローゼットなのだけれど、この使われ方では押入れが妥当だ。
引っ越してからもう2年近くたつのに相変わらず開けられてない段ボールが4つ並ぶ。今日開けなかったらきっと次の引っ越しまでこのままだろう。あるいはひとつ前の引っ越しからこのままだったかもしれない。
どれに入っているか分からなかったので取りあえず全ての段ボールを部屋に出すと、いつもうたた寝をする座椅子の周りがあっという間に占領される。明日の朝同じ光景は見たくない。
最初の段ボールには着なくなった服、二つ目には仕事で使った捨てていいのか微妙な資料。二度と開けることもないだろうからそのまま押入れの奥に戻す。
3つ目の段ボールに高校時代の制服と歴代の卒業アルバムが入っていた。なんで持ってきたのか全然思い出せない。なにか使う予定があったのか、実家が引っ越しをする時に邪魔だからと親が送ってきたのかもしれない。
いや、違う。確か大学時代にそういう相手と付き合っていたんだった。今思うとお互いに制服でというのは一般的なマニアックではない気がする。嫌な記憶がよみがえってきたので段ボールの蓋を閉める。制服は綺麗なままにしておいた方が良い。
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