1人が本棚に入れています
本棚に追加
最後の段ボールにCDは入っていた。100枚以上あるだろうか。全部アルバムでシングルは1枚もない。ほとんどが高校と大学の時に買ったものだ。中古とかダウンロードとか違法配信じゃなくてCDを買うのが本当のファンだなんて言ってアルバイトをして新譜を買っていたけど、今はこのほとんどが108円なのかもしれないと思うとなんだかちょっとむなしい。
背表紙が見えるように敷き詰められたなかでソルファは一番左上にあった。多分あいうえお順に並べてあったのをそのまま入れたのだろう。今の部屋にCDラックはない。音楽は全部パソコンに取り込んであるし、それももうあんまり聴いていない。
取り出すとさっき見たジャケット。でもこっちの方は少し色が濃い。多分買ってきたやつは保存状態が悪かったのだろう。ケースを開けると折れ線がついたステッカーが入っていた。確か2年の時同じクラスだった高橋に貸したらステッカーが折られて円盤の裏にいくつも傷がついていたんだっけ。文句を言ったら逆切れされてそれ以来話してない。まぁ大して仲良くなかったから別に良いんだけども。
あぁ、そうか。このCDはさっき買ってきたのとは全然違う。ここには高校時代の私が詰まっているんだ。曲だけじゃない。この段ボールに入っている一枚一枚が特別な私だけのアルバムだ。
ソルファのディスクを持って立ち上がる。そしてプレイヤーの停止ボタンと取り出しボタンを続けざまに押す。
「ん?」
ディスクが出て来ない。カタカタと中で引っかかるような音を聴いて思い出す。そうだ、このプレイヤーは調子が悪くて時々ディスクが出て来ないんだった。
諦めてもう一度再生ボタンを押す。一曲目のイントロが再び流れ出す。ベースの音ってこんなにハッキリ聴こえたっけ。
手に持ったソルファとソルファの中に入ったダフトパンクを見比べる。きっとこのCDはあいつの中では私の家で飲み込まれたアルバムなんだろうな。
返した方が良いのだろうけどなんとなくそのまま持っていたい気もする。
まぁそれは顔を合わせて音楽の話をしながら考えることにしよう。
最初のコメントを投稿しよう!