とある夏の日…

3/4
前へ
/4ページ
次へ
都会育ちの私にとって、田舎の祖父母の家は楽しい 海沿いに建つ古い母屋の近くには、木造で黒い漁師小屋 どこもかしこ探検ごっこが出来る、小学校三年生にはもってこいの家だ 従兄弟も沢山で、とにかく毎日騒がしい 興奮しながら遊びまくって、夏の一週間以上が過ぎていく そんなある夜、祖父が珍しく出かけていった 硬い表情をしていたのを覚えている ちょうど従兄弟達も何人か帰っていて、私も明日のフェリーで帰る予定だった その夜、祖父は帰ってこなかった 波の音が妙に大きく聞こえて、煩くて眠れない 寝苦しくて、私は起き上がった そして、ふと海の方を見て固まった ザザァン……ズッ…ザザザン……ズズズッ… 押し寄せる波飛沫の合間、見間違いかと思えるくらい薄く、無数の手が這っては押し戻されていくのを見た 怖くなって、息を飲んで震えていた あれを見続けるのはいけない! 咄嗟に思った
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加