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ガンッ
「!」
突如なった音は、玄関の戸を叩く音だった
古い家だから、表は木戸に磨りガラスがはまっているだけ。叩くと、鈍いガラスの音がする
来たんだ……あれが…
私は咄嗟に立ち上がった
確かめないままにしておくのが怖かったんだ。もし、入ってきたら……
階段を駆け下りてすぐが玄関。見て、そして短く声にならない悲鳴を上げた
磨りガラスに、影が映っていた
たぶん、女の人。影だけだったけど、そんな予感がした
ガンッ…ガンッ……
弱い音だけど、響く
怖くて腰を抜かしてしまった私はそのまま動けなくて震えていた
とっ、その肩を誰かが叩いて、今度こそ私は悲鳴を上げそうになた
でもその口は、肩を叩いた人の手で塞がれてしまった
「みこちゃん、ダメよ」
「お祖母ちゃん…」
「入れちゃなんね。黙っとき、帰るから」
冷静なお祖母ちゃんの声に、私は黙って頷いた
お祖母ちゃんが言った通り、しばらくして影は消えていった
ほっと息をつくと、お祖母ちゃんが私を手招いてくれる
そうして、仏壇の前で手を合わせた
「あれ……」
「今朝ね、仏さんが上がったんだよ」
「…え?」
お祖母ちゃんは何でもない声で言った。それに、私は小さく声をあげる
「祖父ちゃん、今日でかけたっしょ? あれ、その仏さんの通夜なんだよ。誰かわかんなくてね、そういう時は数人で蝋燭の番をするんだよ。そういう日はね、お礼参りがあるんだよ」
お礼参り…。その言葉に、ゾクゾクした
あれは、その引き上げられた人だとでも言うんだろうか
「なんにしても、ほっとけば帰るさ」
お祖母ちゃんはそう言って、私を自分の布団に招き入れてくれた
あれがお祖母ちゃんの言った通りのものなのか、それを知る術はもうなかった
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