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縁は主婦に言った。
「この辺りの方ですか?」
主婦は言った。
「ええ……青山さんの隣に住んでるのよ。窓からこの子が電柱の影に隠れて、青山さんのお宅を覗き見してるから、てっきり……」
縁は主婦に言った。
「前にもこのような事が?」
「最近物騒でねぇ……変な男がうろついてるって、近所で噂があって」
「変な男が?」
「そうなのよ……帽子を深く被った背の高い男が……」
縁は顎を撫でた。
「あんた達、高校生でしょ?物騒だから早く帰りなさいよ」
そう言うと主婦は美香の隣の家に帰って行った。
瑠璃は心配そうな表情で縁を見た。
「新井場君……」
縁は腕時計を見て言った。
「時刻は午後8時30分……青山さんの行方がわからなくなって、およそ8時間30分か……」
達也は泣きそうな顔で言った。
「縁……」
縁は言った。
「何かあったのは間違いなさそうだ……それに、時間もだいぶ経過している……」
桃子は言った。
「急いで探さないとまずいな」
縁は言った。
「しかし、何処に消えた?店からここまで、ほぼ一本道だ……雨家さんの話だと、青山さんはサボったりするような娘じゃない……」
桃子は言った。
「どうするつもりだ?」
縁は言った。
「さっきのおばさんが言っていた、不審者の情報を聞きながら、ここから店までに何か痕跡がないか探そう」
瑠璃が言った。
「警察に連絡をしたほうが……」
縁は言った。
「百合根署の今野刑事に、俺から連絡を入れておくよ……拉致事件の可能性もあるからね」
達也は顔面蒼白になった。
「ら、拉致って……縁……」
縁は言った。
「達也っ!しっかりしろっ!とにかく今は青山さんの無事を信じて探すぞ」
夏休み最後の夏祭り……やはりただでは済まなかった。
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