第八話 夏祭りと秋の訪れ

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4人がパン屋に入ると、優しそうな老夫婦が閉店の準備をしていた。 おそらく店主とその妻だろう。 後片付けをしていた店主が、縁達に気付き、申し訳なさそうに言った。 「すみません……もう店じまいなんですよ」 縁は店主に言った。 「いえ、少し聞きたい事があって……」 店主はキョトンとして言った。 「聞きたい事?はて……」 達也が言った。 「昼頃に美香……女子高生が買いに来ませんでしたか?」 すると、店主の妻が言った。 「美香……もしかして、青山さんの?」 達也は身を乗り出して言った。 「そっ、そうですっ!青山、青山美香っ!来ませんでしたか?」 店主の妻はニコニコしながら言った。 「ええ……来ましたよ。昨日も今日も……」 達也は声を荒げた。 「なっ、何か変わって様子はっ!?」 達也の様子に店主の妻は少し驚いたようで、戸惑いながら言った。 「特には……美香ちゃんに何かあったの?」 縁は慌てて言った。 「いえ……そう言うわけじゃ……」 すると、ただらなぬ様子の達也を見て、店主が言った。 「何かあったんだったら、警察に……」 すると桃子が言った。 「心配する必要は無い……実は美香と夏祭りの待ち合わせをしていたのだがな……どうやら行き違いになったみたいで……それで、この店に寄っているかもと思ってな」 店主が言った。 「今、昼前にって、言わなかったかい?」 桃子はとぼけて言った。 「昼前に?そんな事を言ったか?」 店主の妻は不安そうに言った。 「だったらいいんだけど……」 縁は店主に聞いた。 「青山さんはいつも……何を買っていますか?」 店主は少し怪訝な表情で言った。 「どうしてだい?」 縁は言った。 「俺も食べようと思って……」 店主は言った。 「それなら……パックに入ったサンドウィッチだよ。今日はもう売り切れたけど……」 縁は残念そうに言った。 「そうですかぁ……明日はありますか?」 店主は申し訳なさそうに言った。 「すまないねぇ……明日も作るから、明日に来てくれるかい?」 縁は言った。 「ええ……明日買いに来ます……」 そう言うと縁は3人を連れて店を出た。
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