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①
……百合根神社……
夏休み最後の日もあってか百合根神社の夏祭りは人で賑わっていた。
百合根神社は決して大きい神社ではなかったが、風情溢れるこの神社は地元の人間に愛されていた。
そんな風情溢れる神社の夜店で、縁と桃子はそれなりに楽しんでいた。
ピンクの浴衣に身を包んだ桃子は、とても絵になっていた。
長い髪を後ろで束ね、下駄をカラカラ鳴らしながら歩くその様はモデルさながらだ。
対する縁はいつも通りのシャツにジーンズといった格好だった。
それでも縁は綺麗な顔をしているので、桃子に見劣りすることはなかった。
境内を少し進むと、大きな木の下で一人の高校生くらいの男子が立っていた。
様子から察して、誰かと待ち合わせをしているようだった。
縁はその男子を見て呟いた。
「うん?あれは……」
桃子は言った。
「どうした縁?」
「あいつ……俺の友達だ」
縁は大きな木の下に行き、その男子に声を掛けた。
「おいっ!達也」
達也と呼ばれる男子は縁に反応した。
「あっ!縁……お前も来てたのか」
森谷達也(もりたにたつや)縁のクラスメートで、縁の友人だ。
縁は達也に言った。
「こんな所で何をやってんだ?」
達也はニコニコしながら言った。
「彼女と待ち合わせしてんだよ」
縁は恨めしそうな目をして言った。
「あらそう……それはようごさんしたね」
すると達也は縁の肩に腕を回し、耳元でこそこそ言った。
「それより……あの美人誰よ?」
達也はどうやら桃子の事を言っているようだ。
達也は言った。
「お前いつの間に、あんな美人を?彼女か?紹介してくれよっ!」
縁は呆れて言った。
「何を言ってんだよ……彼女じゃねぇよ」
すると、桃子が怪訝な表情で言った。
「何をこそこそ話してる」
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