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桃子の言葉に縁と達也は、自然と背筋を伸ばした。
桃子は達也に言った。
「縁の学友か……私の縁がいつも世話になっている」
達也は顔を真っ赤にして言った。
「わ、私の……縁?」
縁はすかさず言った。
「どさくさ紛れに何を言ってんだよっ!達也っ、違う……誤解だ」
達也は桃子に見とれていて、縁の声が耳に入っていないようだ。
縁は桃子の手を引っ張って、呆けてる達也に言った。
「じゃあな、達也……また学校でな」
縁は逃げるように、桃子の手を引っ張りその場を離れた。
縁に手を引かれながら、桃子は言った。
「縁……どうした?今日は積極的だな」
「何を言ってやがる……この場から離れたいだけだっ!」
学校で変な噂が広がらないか……縁の頭はその事でいっぱいだった。
それからしばらく縁と桃子は、夏休みを楽しんだ。
高校生男子と女子大生が普通に楽しむように……。
縁と桃子が祭りを楽しみながら、境内を歩いていると、いつの間にか先程達也と遭遇した、大きい木まで戻ってきた。
すると縁は何かに気付いた。
「うん?達也……」
桃子が言った。
「どうした?」
「いや、達也のやつまだ木の下にいる……しかも一人で」
縁の言う通り、達也は一人で木の下に立っていた。
達也の彼女らしい人影は……近くにはなかった。
縁は達也の立っている木の下に行った。
「達也っ!」
縁の呼び掛けに達也は反応した。
「あっ、縁……」
達也の表情は暗い……縁は達也に言った。
「まだ彼女は着いていないのか?」
「ああ……」
桃子は言った。
「すっぽかされたのではないか?」
縁は慌てて桃子に言った。
「ちょっ、ちょっと桃子さんっ!」
達也はさらに暗い表情で言った。
「やっぱり……そうなのかな……」
縁は言った。
「おいっ……落ち込むなよ。彼女から連絡は?」
達也は言った。
「さっきからずっと電話してるけど……電源が切れてるんだ」
桃子は言った。
「着信拒否ではなさそうだ」
縁は言った。
「桃子さんは黙っててっ!達也、彼女とは何時に待ち合わせを?」
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