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私は居間で、テレビを見ていたのですが、急に頭が重くなり、頭痛で起き上がれないほどになりました。母に助けを求めようと、台所に這って行くと、どうも妙な臭いがします。母は、ボーっとガスコンロの前に立っており、その臭いはガスの臭いでした。私は重い体をなんとか動かし、コンロのつまみを慌てて元に戻しました。
「お母さん、何しよるん!ガス、開きっぱなしやん!」
すると、母は無表情で私に向き直ると、黙っていました。
まるで別人のように私をキョトンと見ていました。
私は、慌てて窓を開けて換気をすると、ようやく頭痛がおさまってきました。
母は何をするでもなく、呆然としています。
私は大人になってもしかしてあれは無理心中未遂かと思いました。
その後、父は67という若さで他界してしまいましたが、その後も私と母は私が嫁いでも、時々遊びにきたりして、良好な関係を保っておりました。
ところが、最近になって母は、痴呆が始まってしまい、まるで別人のようになってしまいました。
あの、ガスを開いて呆然と立ちすくんでいたあの顔と同じ、無表情な顔で、徘徊を始めたので、やむなく弟は母を施設に預けることに。
最初は母を見舞って、時々施設を訪れておりましたが、弟は覚えていても私のことは全く覚えていません。
「おかしいなあ。俺より、姉ちゃんのほうが仲が良かったから、覚えてそうなもんだけどな。」
弟はしきりに、不思議そうに私に話します。
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