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炎火の波に呑まれた大地。轟々と燃え上がるその炎は人々の命を喰らい、焔人へと変貌させた。
黒き衣を持った竜が業火を空に吐き、淡黄色の虎が稲妻を地に落とす。
数多の羽をチラつかせた純白の大鳥は、光の如く戦場を駆けた。
唯一、戦火を浴びずにいた黒蛇は、その巨大な瞳を戦地に向けた。
古神と人間との血が空を埋め、世界は一夜にして地獄と化す。
白鳥が倒れ、黄虎が封印され、災厄の原因とされた黒竜は――世界からその姿を消した。
限りある才人を集結させ、魔のある部族に死の灰を積もらせていく。
幾たびの嘆きを越え、幾たびの亡骸を越えた先にあるのは――虚無だけであった。
幸福の都を創造した大多数の人間は、神に好かれし族を滅ぼした。
数多く残した戦果に祝う世界。闇に落ちていく部族の里。
時を同じくして、同胞の亡骸を背に赤き竜の血を引く俺は、その日――――――――竜となった。
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