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こんな日でも、下級生たちには部活の放課後練習があるらしい。去年はどうだったかな、と脳内を探ってみる。
……そうだ、早帰りだったからシュプレとケーキの食べ放題に行っていたんだった、とわたしは見事記憶を引っ張りあげることに成功した。
今年もあのホテルでは、夏のスイーツバイキングが開催されているのだろうか。今年も行きたかったけれど、もうスケジュールが厳しい。次の機会か、いっそのこと来年に期待しよう。
校庭から聞こえる誰かが誰かに呼びかける声。
ボールが何かに当たる音。
距離があるせいで間のびしたように聞こえる、吹奏楽部が奏でる音楽。
ほとんどの生徒が帰った、教室。
まだ残されている時間割表に掲げられた校内目標。窓辺で揺れるクリーム色の薄っぺらいカーテンと、粗末な机に、時おりきしむ椅子。
空っぽのロッカー、すっかり軽くなったバック、帰宅を促すかのような、傾いた日差し。
「ねぇ、クオラ。わたし、明日が不安で仕方がないんだけど」
親友のシュプレがボソッと低い声で呟いた。
「明日、もし、万が一サモチに、なれなくても、ワモチの身分は、確約されているん、ですよ、ね?」
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