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「うーん、やっぱり、人間じゃないと物足りないなぁ」
「あいつらだって食えばそこそこだろ」
「濃さが違うんだよねぇ」
それでもそれなりに満足したらしい彼女はそれで、今回の食事をやめることにしたようだ。
「ヘリヤ。俺に何か用か?」
そんなヘリヤに、マトは逃げていったメージャたちが残していった酒を術で手元に引き寄せると渡してやった。ヘリヤは目を輝かながら、どこからか取り出した器に酒を注ぎ、口に運んでいる。
「あたし、人間のところに行くことにしたの」
「そりゃ……アンタが地上に上がったら、人間界はさぞかし大惨事だろうな」
ヘリヤの美しさにはなんとなく人間らしいところがある。地上の人混みの中を歩かせても、彼女がメージャであると気づく人間は少ないだろう。
ただ造形として芸術的な美しさを求めたなら、先ほどの猫と犬のメージャのほうが余程繊細に整っていて美しい。人間の価値観を持つものならば、きっとそう感じたに違いない。
「けど、地上には今、エスコがいるぞ。狩りをするときは気をつけろよ」
俺は関わりたくない、という意思を示すつもりで、起こしかけていた半身をマトはまた横にする。そこをヘリヤは覗き込んできた。
「違うよ、あたし、サバクになるの」
「はぁ?」
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