視線の先

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自分には霊感というものがあります。幼い頃から空中を浮遊するおじいさんが見えたり、事故の多い踏み切りでは足だけの霊を見たり。 でも周りには言いません。大抵、嘘つき呼ばわりされるか、怖がって離れていくか、または面白がって引っ張り回されるかがオチですから。 そんな自分ですが、最近妙に強い視線を感じる時があります。 私は実家住まいなのですが、一戸建ての二階に自分の部屋があります。視線は、自室にいる時に感じます。 何処からなのか神経を研ぎ澄ませ、そちらに目を向けてみる。しかし、何もいない、そんな事が頻繁にありました。随分シャイな霊だな、一度見てみたいもんだ。そんな事をこの時は思ったんですが、後々後悔する事となるのです。 会社の飲み会があり、タクシーで深夜に帰宅した私はベッドへ俯せで倒れこみました。 するとあの視線です。目を瞑ったままの私は視線の先を探りました。天井だ、天井から見られてる。 私は目を閉じたまま転がり、仰向けになりました。 「どーせまた目を開けたらいないんだろ。」 酒の勢いで、ふざけた事を言いながら私は視線の主に話しかけて、ゆっくり目を開けたのです。 「うわっ!?」 視線の先の天井には無数の目がこちらを見つめていました。 一つだけじゃない、30、40と数えるのも嫌な程の目、目、その物言わぬ目がジイーっとただこちらを見ていたのです。 すると今度は、貼り付いた様な目が、ズルリと飛び出して、私目掛けてボトボト落ちて来たのです。 「うわぁぁぁー!」 悲鳴を上げた私は、その日恥ずかしながら気絶して、起きた時は既に朝になっていました。 私はそれ以来、視線が怖くなり、その先を辿る事を止めました。 自分に向けられた視線が・・・怖くて怖くて仕方ないのです。
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