間違いは恋の始まり。

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もうすぐ7月が終わる。 補習や夏期講座は7月いっぱい続くし、進学校だからか、夏休み前だというのに夏課題も山のように出されている。でも大体成績は上の下くらいだし、俺にはなんといっても穣(ユズル)という最強の味方がついているから、分からない問題があっても怖くない。成績優秀、1学年500人もいるこの高校でトップ5で入学した此奴は、定期考査でも期末考査でも成績を落とすことなく、常に上位5位以内をキープし続けている。 そんな課題の心配よりも、夏といえば海、花火大会!そして一緒に行くのは水着や浴衣姿の彼女だろ。今まで勇気が出せなくて告白なんてできないし、モテるわけでも無いから告白もされず、ずっと彼女が居なかったけれど…今年こそは華やかなサマーライフを送りたい。そんな目論見をしていた俺は、ついに一大決心をすることにした。 「俺決めた!告白する!」 唐突な俺の言葉に、隣で本を読んでいた穣が驚いたように顔を上げる。栞を挟んで机の上に置くと、物珍しそうに俺の顔を見つめた。 「へぇ…とうとうやる気になったんだ?んで、相手は例の文化祭実行委員だっていうサヤちゃんか?」 「おうよ、今年の夏こそは可愛い彼女とラブラブの夏にしてみせるぜ」 俄然やる気な俺の様子に、穣は面白そうに笑いながら頬杖をつく。サヤちゃんというのは隣のクラスの可愛い系美少女で、うちのクラスで俺が無理矢理選出された文化祭実行委員で一緒になった。それでいて彼氏は居ないらしい、という情報を隣のクラスの奴から掴んでいる。 「ふーん。それで、中学の時に全く勇気が出せず彼女ができなかった陽祐(ヨウスケ)君は、どんなアプローチを仕掛けるわけ?」 「決まってんだろ、ラブレターだ!」 「は!?ラブレター!?」 「え、古い?」 「古い云々の問題じゃなく普通告白なら直接するだろう、ヘタレ」 そんな事を言われても、彼女いない歴=年齢の俺には、直接告白する勇気なんて持ち合わせちゃいない。 「そう言う穣だって彼女居ねぇじゃんか、ヘタレなのは一緒だろ」 「え、恋人居るけど?そして俺は自分から直接告白したけど」 「はぁ!?聞いてねぇんだけど!!」 「あぁ、言って無かったからな」 悔しい…何が悔しいって、頭脳明晰だが人付き合いの薄そうな此奴に彼女がいるなんて。しかも、自分から告白していたなんて。衝撃的事実を告げられて、俺は暫く机に突っ伏したままで立ち直れなかった。
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