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だけど、俺をにらみつけたまま何も話さない。
ひょっとして、極度の人見知りとか?
じゃあここは俺が先に話すしかない。
「は、話は妹から聞いてるよ。兄の柳澤紘史です。よろしく」
サッと右手を差し出・・・したのに、
その男が手を握ることはなかった。
あさっての方向を見て、ズカズカと家に上がってくる。
な、なんなんだ、この男は。
「おい、ちょっと」
「部屋は」
「え?」
「俺の部屋は、どこですか?」
初めて聞く声は、高くもなく低くもなく。
だけどクールで無愛想な言い方だった。
こんなヤツが教師になろうとしているのか?
こんなヤツが芽衣の彼氏なのか?
「おいってば!」
大きな声で言うと、ようやく俺の言葉に反応した。
今が言うチャンスだ。
「これから一緒に住む相手に、その態度はないんじゃないか?
『よろしく』とか、一言あってもいいと思うけど!」
小野寺は表情ひとつ変えず、口を開く。
「よろしく」
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