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なるほど……これを見て盛り上がっていたわけか。
おそらくは従兄弟達が見たいとでも言って、それでこの家族写真鑑賞会が始まったのであろう。
それにしても、本人がここにいるってのに、無視して僕をダシに盛り上がってくれちゃって……。
僕は少々癪だったので、しばらくこのまま黙っていて、誰かが気づいて驚くのを待つことにした。
まさか、ネタにしている当の本人が実は目の前にいたと知ったら、さぞかしみんなビックリするに違いない……なんとも愉快だ。
そんな悪戯心を抱き、そのまま静かに頭上から見守っていると、みんなは僕の思惑通りにアルバム鑑賞をなおも続ける。
「あ、これはみんなで北海道行った時のだ!」
「これはその年の正月に撮った親族一同の集合写真だな」
初めは誰か気づくまでの暇つぶしに見ていたアルバムであるが、見ている内についつい僕も写真を眺めることに集中してしまう。
ページを捲る度に、古い写真とともに懐かしい思い出が次々と僕らの前に再生される。
僕と妹の入学式や卒業式といった節目々〃で撮っている記念写真……。
お花見や運動会、誕生日にクリスマスなどのイベントで撮ったスナップ写真……。
長い休みになると必ず行った国内や海外の家族旅行写真……。
そして、今日みたいに親戚一同集まった時に、なんとなくお約束で撮影してきた集合写真……。
どれもこれも一目見れば、その時の記憶が鮮明に蘇る思い出の一枚だ。
「ああ、これは去年、みんなが来てくれた時のね……」
「帰る時に、一応いつものことだからって撮ったんだったな……」
…………あれ?
しみじみと言う母さんと父さんの声に、その集合写真へ視線を移した僕はある不思議なことに気づく。
馴染み深い顔の並ぶそこに、僕の顔だけは写ってないのだ。
……この写真を撮ったのはいつだろう? 半袖やハーフパンツを穿いている皆の服装からして、どうやら季節は夏らしい……去年と言っていたが……その時、僕だけはいなかったのかな?
まあ、最近、僕は東京の大学に通っていて滅多に帰ってこないし、そんなこともなくはないと思うが……。
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