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「チビお化けちゃ~ん、元気でちゅか~?」
「あっ……ど、どもんさん……」
赤ちゃん言葉で声で呼びかけられ、怯えた様子で俯く《チビお化け》。初めから分かってはいたが、明らかに二人が良い関係を築いているようには見えない。
「昨日一昨日の夏祭りは楽しかったぞ~? 屋台で美味いもん食って、射的とか金魚すくいで遊んで。二日とも見かけなかったけど、お前はどうだった? チビお化け」
「……え、えと……夏祭りは、あの……」
「おぉ分かってるって、行ってないんだろ? つーか、俺らがいたら怖くて行けねーか! ……いつものアレ見せてみろよ、オラッ!」
「痛……っ! や、やだぁ……!」
言葉を失った。乱暴な奴だと思っていたけど、まさかここまでするなんて。
なんと土門は、いきなり女の子の長く伸びた前髪を掴んで、無理矢理に立ち上がらせたのだ。
「ちょっと、土門く……っ?!」
ニタニタと笑いながら小さな女の子に乱暴する土門を止めるべく前に出ようとしたが、同じように嫌らしい笑みを浮かべた取り巻き達が俺を取り押さえて後ろに追いやる。
「な、何してるの……!? あの子、可哀想だ。止めさせないと!」
「まーまー、充君も空気読めって。あいつすぐ泣くからおもしれーんだよ」
「それにホラ、あいつの顔よく観察してみな? もっと面白いもんが見れるぞ?」
怒りに震えながらも促されるまま女の子に目を向けて、思わず俺は息を呑んだ。
紫がかって見える髪と同じ色をした左の瞳と違い、それまで前髪で隠されていた右の方の瞳は、まるで琥珀のような透き通った金色をしていたのだ。
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