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父方の祖父と祖母、そして父の弟にあたる叔父(独身)は、俺が暮らしている処から少し離れた地域に住んでいる。
まぁ、離れていると言っても車を使って四十分程の距離なのだが、そんな祖父宅へうちの家族が毎年必ず足を運んでいるのが、楽しい夏休みの真っ只中にありながらどこか神妙な気分にさせられるお盆の時期だ。
地元での墓参りを済ませると、俺達・野中家は一緒に暮らしている母方の祖父と祖母も交えた家族総出で、父方の家族へ挨拶に赴く。
そして、たっぷり歓迎されてからそちらでも墓参りを終わらせた後は、その地域で開催される夏祭りを泊まりがけで楽しむのというのが、うちの家族での恒例行事になっているのだ。
ただ、お盆の期間中をそちらの家で過ごすにあたり、俺の中で悩みの種となっている存在がいた。その地域の男子を束ねていた、《土門》という当時小学五年生ーー俺より二つ年上のガキ大将だ。
あまり喋らない俺を聞き分けの良い子分と見なしたのか、あるいは姉貴に色目を使ったのか。土門は余所者である俺や姉貴にもかなり友好的で、夏祭りの日は他の手下ともども屋台を案内してくれたり、神社の境内での花火に参加させてもらったりもした。
しかし、何かにつけて威圧的に声を荒げ、自分の思い通りにならないとあからさまに機嫌を悪くする奴の事が、正直なところ俺は心底好きではなかった。
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