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「お、お前っ……! こんなの、どこで……!」
「ふっふっふ、叔父ちゃんの部屋の本棚の奥で見つけてきたのだよ! 叔父ちゃん、仕事はできるらしいしイケメンなのに、彼女いない歴=年齢とか絶対コレが原因でしょ」
「……人の趣味だろ、詮索するなよ」
「いやいや、これの他にも似たようなのいっぱいあったし、このままだと叔父ちゃん一生“どうてー”だって! ……あれ? どうてーって、『恋したことない人』って意味で合ってるよね?」
「……知るか」
「あ、そう。で、まぁ、ホントはこうやって手に持ってるだけでもキモいから嫌なんだけど……私もこれ見てアニメとかの“あくせー”を分析して、叔父ちゃんがフツーの女の人と恋できるように説得してあげないと! ……それで、ご褒美におじいちゃん達から何か買ってもらったり……えへへ」
「怒られても知らないぞ……」
「だいじょぶだいじょぶ。じゃ、そういうワケだから、私は皆の買い物に付いてったって事にしといてねー」
怪しまれないためか自分の靴を玄関から回収し、姉貴は再び二階へと上がっていった。
ともあれ、俺もそろそろ動いた方がいいだろう。俺を呼ぶ土門の声に、さっきからちらほらと怒気が見え隠れしている。
「……ちょっと待っててー」
急いでいる感じを出しながら戸を解錠すると、こちらが開けるまでもなく土門の方からズカズカと玄関に上がり込んできた。
「遅い! 何してたんだよ今まで!」
「ごめん、寝てた。疲れてて」
「チッ、だらしねーな。あっ、満ちゃんは居ないのか?」
「父さん達と買い物に行ったみたい」
「ふーん……」
素っ気なく鼻を鳴らす土門だったが、その視線が靴棚をなぞっていたところを俺は見逃さなかった。靴があったら家の中にまで上り込むつもりだったのだろうか。
「それで、今日は何するの? 土門君」
「おう! 今日は飽きるまで公園で遊ぶつもりだ! 具体的には、そうだなぁ……おっ、お前ん家サッカーボールあんじゃん! これでキックベースしようぜ!」
「サッカーはやらないんだね」
「はっはは、お前バカだなぁ! 今日は本田と小澤と松森がいないんだから、サッカーじゃ人数足りなくなるに決まってるだろ!」
上がってきたのは君だけなんだから外に控えてる子分の人数なんて分からないに決まってるだろ、 という言葉を飲み込んで、俺は土門達に連れられるまま家を出たのだった。
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