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辿り着いた公園は、地元にあるものよりも三倍近い広さがあった。
四方を木で覆われた区画の中心には、雑草がきれいに取り除かれたひらけたフィールドがあり、遊具はその両脇を囲うように、滑り台やジャングルジムなど様々なものが設置されている。
……ちなみに、地元の公園にはブランコと鉄棒しかない。
「よーっし、俺らが一番乗りか! とりあえず、ベースの代わりになるもん探さないとな! 最悪地面に描いてもいいけど」
「……十四人しかいないのに、七人チームでキックベースできるの?」
「バッカお前、そこは臨機応変にやるんだよ。キックベースだからセカンドはいらねーし、外野も二人で十分だよな!」
なら同じ理屈でサッカーもできたんじゃ。まぁ、きっと彼はサッカーが苦手か嫌いなんだろう。
そんなことを考えながら皆と公園に足を踏み入れようとした時、ふいに先頭を歩いていた土門が「んん?」と素っ頓狂な声を上げて立ち止まる。
「どうしたの? 土門君」
「いや……あそこに《チビお化け》いんじゃん」
「チビお化け……って、何?」
「俺らの学校の二年に、そう呼ばれてるおもしれー女子がいんだよ。ほら、アレアレ」
土門が指差した公園奥のシーソーに、俺もそれらしい人影を確認することができた。
(……あの子が、チビお化け……?)
小さな小さな女の子だった。涼しそうな水色のワンピースを着て、花柄のポシェットを肩にかけている。遊び相手はいないらしく、一人でシーソーの真ん中に座ってぷらぷらと足をぱたつかせていた。
でも、小さいのは分かるとして、土門はあの子のどこを指して《お化け》と呼んでいるんだろう。
おかしな特徴があるとすれば……強いて言うなら、全体的に短く切り揃えられている髪のうち何故か前髪の右半分だけが異様に長く、右目の辺りをすっぽりと覆い隠している。そこは、“あの有名な妖怪”に似ているかもしれないけれど。
「ちょうどいいや、今から充に面白いもん見せてやるよ。ホラ、行くぞお前ら」
口端大きく吊り上げて笑い、後ろについてくるよう俺達に指示して歩き出す土門。
誰かの不幸を楽しんでいるような、俺の大嫌いな笑い方だった。
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