【第二章:スズと風のサーカス団シルフ 二十一】

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 大声で罵倒される覚悟も決めていたスズだったが、フーカは写真を両手でそっと包み込んで、それに命が宿っているかのように、守るようにして見つめた。 「……良かった……これが無くなったらあたし、何にも繋がりなくなっちゃう……」  そしてそう言って、ポロポロと大粒の涙をこぼし始めた。  写真を包んだ掌をもう一方の手で固く握りしめ、歯を食いしばって時々しゃくりあげるようにしながら、ほとんど声を出さずに泣いている。  ただ涙だけが幾筋も頬を伝って流れ落ちていった。 (この子はどれだけ長い間、こうやって声をあげずに泣いてきたんだろう)  自分にも覚えがある。誰にも話すことすらできない痛みは、いつかそれが和らぐまで、そうして耐えるしかないのだ。  立ち去ることも、声をかけることもできず、スズはフーカの傍に立ち尽くしていた。
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