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「さてこれで全員……おっと、申し訳ない。
私、自分のことを忘れておりました」
声に惹かれて階段の上を見ると、そこにはいつの間にか大きな黒いシルクハットがポツンと置かれていた。
シルクハットは自らクルクルと回るように動きだし、ピョンピョンと跳ねるようにして、階段を下り始めた。
三段目を下りたあたりで帽子の中から黒革の靴が飛び出し、それから一歩一歩階段を下りるごとに、タキシード姿の足が、胴体が、と、まるで帽子から体が生えてくるように姿を現した。
そして最後には黒と白のハチワレ模様の、凛とした美青年ネコの顔が帽子の下に出現し、全体としてはどこか吸血鬼のような風貌の、妖しげな魅力のマジシャンが誕生していた。
彼はポンと手を合わせると、その両手の間から、金の龍の頭飾りのついた長いステッキを取り出した。
そして大きな真紅の瞳で辺りを見渡すと、ステッキをマイクのように口に寄せた。
「団長を務めさせていただいております、私、魔術師のブラック・ミスト。
我らシルフの八人をどうぞよろしくお願いいたします!!」
観客の全てを魅了する美しい笑顔で、そう高らかに宣言した。
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