【第二章:スズと風のサーカス団シルフ 五】

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 しばらくボーっとフーカの走り去った方を見ていたスズの肩に、ポンと手が置かれた。 「もし、フーカとこの世界で結婚して一生愛しぬくなら許すけど、手を出しておいて地球に一人で帰る、とかだったら許さないから。そのつもりで、ね?」  いつもと口調は同じだが、仮面の中から発せられる空気は別物のギンコからの脅迫めいたメッセージでスズは我に返った。 「……あ、ハイ」  すいませんでした、と心の中でなぜか謝ってしまってから、そんないきなり結婚とか言われてもまだ中学生だしといったいろんな楽しい妄想がスズの頭の中を駆け巡っているうちに、シルフの他のメンバーが現れ始めた。  ぴょんぴょんと跳ねるように出てきたのは、リンクと呼ばれていた子ネコだ。 「にゃっ!? ギンコにゃ! にゃんでここにいるにゃ!」  そう言ったリンクをひょいと持ち上げると、高い高いをしながらギンコは嬉しそうにこう答えた。 「ちょっと先回りをさせてもらってね。  リンクは相変わらず小っちゃくって可愛いなあ!」 するとリンクはちょっとムッとし、「育ち盛りニャ! まだまだこれから大きくなるニャ!!」とバタバタして、地上に降ろされると走って行ってしまった。  その後すぐに現れたのは、王虎(オウコ)と呼ばれた、身長二メートルを軽く越す虎の大男だった。 「おおギンコ! お前も風の国に来てたのか。久しぶりだな……」  とギンコと二人、手をがっしりと組みながら話していると、オウコに向かって後ろからどーんと抱きつくようにして、華羅(カラ)と呼ばれた美女が現れた。 「やだ、ギンコじゃないの久しぶり! なんでここに……」  と言いかけて、ふとスズの方を見た。 「……なるほど。ふぅん、やっぱりセン様の占いは完璧ね。  後で紹介してね! 坊やもよろしくね! さ、行くわよダーリン♪」  そう言うと、何が何だか解らない、という顔のオウコを押すようにして前に進んでいった。  するとギンコたちの場所から少し離れた所にいる、エッジと呼ばれていた鼻メガネをかけた狐のネコタミが、大きな耳をピクリと震わせてこちらの方を見た。  隣にいるマルコというライオンのネコタミに耳打ちすると、マルコはこちらをじっと見つめ、肩の上に乗っている赤い冠羽を持つカラスのような黒い鳥に話しかけた。
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