【第二章:スズと風のサーカス団シルフ 五】

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 最後に現れたのは老師テンと団長ブラッドだった。 「久しぶりじゃな、ギンコ」  との声が聞こえる前にギンコはものすごく綺麗な九十度のお辞儀をしていた。 「お久しぶりです、老師!!」  心なしかギンコの声が震えている。 「まあまあ、そう畏まらずとも良い。後でな。少年、君も」  ふぉっふぉっふぉっ、とヒゲをさすりながらテンは去っていった。 「あー、怖かった」と小さくつぶやくギンコに、笑いを含んだ若く、魅力的な声が掛けられる。 「本当に君がミズサキ《案内人》で大丈夫かなぁ? ギンコ。しっかりね。  新しい世界には慣れたかな? どうぞよろしく」  そう言いながらスズに手を差し出してきたのはブラッド、この風の国のサーカス団、シルフの団長だ。  スズは驚き、そして一度ギンコのほうを見て、頷かれたので照れつつも手を差し出した。  握手をしながらブラッドは「君のその服、袖の飾りで見えにくいけれど、バレてはいけない所では手にも気をつけるようにね。我々ネコタミのように見える手袋もあるから」と、スズの耳元でそっとささやいた。  言われてみれば、とスズは驚いて手を引いた。  ヒラヒラとした布飾りのせいで一見目立たないが、握手をすれば一度でバレるだろう。  最初に気づかれたのがこの人で良かった、と思うと同時に、ギンコのほうを見ると、「あ、そっか。ゴメンゴメン。たぶんレオナたちは荷物に入れてくれてると思うけど……。まあそんなとこまで見てるネコタミなんてそんないないよ!」と、あっけらかんと答えられた。  そういうギンコが振る手には隠すように覆う手甲がある。
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