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こちらの世界に来て早々すでに何度か思ったし、ブラッドも言ったことだが、スズは改めて「この人で大丈夫だろうか」と、固く手を握り締めながら考えた。
「まあ、何にせよこれからよろしく。ではまた後で、ギンコ」
笑顔ですれ違いざま、ギンコとハイタッチしてブラッドは風のように爽やかに去っていった。
「なんで解ったんだろう……オレのこと……」
スズが不思議そうにつぶやくと、ギンコは「見えたりするらしいんだよね、神眼や魔力の持ち主には」と答えた。
それが何を意味するのかは解らなかったが、ひとまず頷いておいた。
この際きちんと知りたいことは後でブラッドさんに聞こう。
そうこうしているうちに、観客一周のサービスは終わったらしい。
フーカから順番に、またあの猫型大型車の階段を昇り始めた。
それぞれ段上でお辞儀や挨拶をして、車の中に乗り込んでゆき、最後にブラッドが大きく、金のステッキを胸にあてて礼をすると、階段になっていた出入り口がゆっくりと閉まっていった。
そして再びあの奇妙な音楽を流しながら、ハチワレ・ブラック号は白いテントの裏側に廻っていった。
観客たちは満足げな顔で、わらわらと商店街のほうへ帰っていく。
道化師姿の何人かのネコは、その場に残り屋台などの準備をしているが、ほとんどは大人しく家路についているようだ。
「さ、僕らは目立たないように。こっちこっち!」
ギンコが観客の流れから離れてテントの裏側へと案内する。
数分かけてテントの周りを半周すると、そこからやや遠くの森の空き地に、あのネコ型自動車が停められているのが確認できた。
階段状の入り口は、スズたちを歓迎するようにすでに開かれている。
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