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「八咫烏の、ダンテだ。よろしくしてやっても良いぜ!」
そう言ってふんぞり返る鳥の首には、小さな、赤黒い宝石の付いたネックレスがかかっている。
「彼みたいな一部の魔獣は別として、言葉で意思の疎通ができる存在は、だいたいお互いを捕食することはないから、安心していいよ、スズくん」
笑いながら団長、黒と白のハチワレ模様のネコタミ、タキシード姿のマジシャン、ブラッドが前に出る。
「オレはグルメだから、猿の子孫は喰わねーよ!」という声と、バサバサいう羽音が遠ざかっていった。
「まあ次回の公演国である震国にも、早めに出国すれば、坎国経由でも充分間に合うとは思うけれど……」
ブラッドがスズに笑いかける。
普通に話しているだけなのだが、彼は何だかとても魅力的だ。
団長として皆をまとめているだけの実力があるからかもしれない。
「そうだよフーカ。それに、カラさん! 水の国にマレビト登録に行くんだよ!
上善が見られるかもよ! ボク的にはムカつくけど!」
ギンコが笑った。
フーカは口を三角形にして真っ赤になると、「なっ、……だっ……ううっ、何でそういうこと言うのよ!!」と叫んだ。
一方カラは、「ジョウゼン様かぁ~、良いわねそれ……」と、頬に手を当ててうっとりと右上の空中を見つめた。
「けっ。まさに『Il Principe Azzurro』《水色の王子様》だな」
ギンコが横目で悔しそうに呟いた。
あからさまにキャラが変わったギンコをスズが唖然として見つめていると、「だってさ! 冷たくて無愛想なんだよアイツ!! なのに全女性に対して優しいボクよりモテるっておかしくない?!」とギンコが叫んだ。
なんと言ったらいいのか解らずに困惑した表情を浮かべていると、「だから、そこが良いのよ! 『他の女になびかない彼が、私にだけまっしぐら』、みたいな?」オウコにしなだれかかりつつ、「ねー、ダーリン?」とカラが幸せそうに返した。
オウコはゴフゴフと咳をし、「俺は知らん」と頬を染めた。
どうやらこの世界にもアイドルか有名人のような存在がいるらしい。
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