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「話が思い切りそれたから元に戻すけど、まあ、じゃあ、スズ君を水の国までシルフの一員として連れていって欲しいって、そういうことだね? ……どうします、老師」
ブラッドが、髭の老猫テンに尋ねた。
「……そうじゃなぁ……。ひとまずギンコ、ブラッド、こちらで日程の調整を考えてみることにしようか。……よろしくな、スズ君」
首を傾けるようにして、テン老師は笑った。
「あ、オレ……掃除とか雑用なら何でもします! よろしくお願いします!」
スズは急いで頭を下げる。テンはしゃべりかたも動きもゆっくりな、どこから見てもお爺さんネコなのだが、なぜだか緊張する。
オウコやマルコのほうが見た目はよほど恐ろしいのだが、生物として何か触れてはいけないような……畏怖というか、“何か”を感じる。
「じゃあね、スズ!
夕方くらいまで、てきとーにみんなに構ってもらってて。みんな、彼のこと、よろしくね~」
ギンコが手を振って、テンとブラッドと共に、向かって左側のドアに入って行った。
「っ!!」
半分口を開けて手をそちらに伸ばしたが、スズの置き去り感を高めるようにパタンと静かにドアが閉まった。
数秒後、諦めてうなだれたスズの足元には、とてもワクワクした顔のリンクがいた。
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