【第二章:スズと風のサーカス団シルフ 七】

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 小さな肉球はプニプニとしていて心地が良い。 「じゃあボクがテントを案内するニャ!」という事で、車を出てからリンクはずっと、スズの手を引いて跳ねるように物置小屋やテントの舞台裏を引っ張り回している。  ギンコたちが出て行ってから、魔獣使いのマルコは、「悪いが我輩はこいつらに糧を与えてやらねばならんのでな」と、ヤタガラスのダンテを肩に乗せて、車両の上の階の方へ行ってしまった。  その際、階段の途中で立ち止まり、「また後に我らの仲間も紹介しよう……それとも今来るかね?」とライオンらしい威厳をもって微笑んだが、「お前が今あのヒステリー犬の餌になるか、いつかなるかの違いだな」とダンテが甲高く笑ったので、もしいつか紹介されるとしても、かなり離れた場所からにしてもらおうとスズは首を振りながら心に決めた。  ギンコの師匠である狐のネコタミ、エッジは、「私は車両や機材の整備の確認に呼ばれているんでね……。……フーカ、歳の近い純粋なマレビトは初めてだろう? ……仲良くね」そう言って眼鏡の位置を指で直し、少しだけ心配そうに首を傾けた。 「……はーい」とフーカは右下に目を逸らしながらそれに答えた。  カラは「じゃあ私たちは着替えてから行くから。生まれた国の色だけど、水色って、やっぱり私の毛色に合ってないのよね。ダーリン、帯を解くの、手伝って」と、衣装の袖を返して不満気にもらした。  そして「水色も似合うと思うが……」とやや照れているオウコとともに、やはり上の階の方に行ってしまった。  そういう訳で、ダイニングキッチンには目を輝かせているリンクと、ほとんど目が死んでいるフーカと、そんな二人に挟まれてどうしたものかと目を泳がせているスズの三人が残った。  そして今に至る。
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