【第二章:スズと風のサーカス団シルフ 七】

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 念のためスズは仮面をつけてはいるが、リンクのはしゃぎようが凄いので、どうしても目立ってしまう。  まるで遊園地で出会った着ぐるみを連れて歩く子供のようだ。  その少し後を、フーカは仕方なく付き添う大人の保護者のように歩いている。  子供らしい興味からか、繋いだ手をぶんぶんと振りながらリンクはスズがどうしてこちらの世界に来たのか、あちらはどんな世界なのかということを遠慮なく聞いてきた。  小さなリンクに正直な気持ちを話しても解ってもらえなそうなうえ、自分でも自分の気持ちの説明が上手くできなかったため、要約すると『学校が嫌だからこちらの世界に来た』ということになってしまった。 「にゃんだかよく解らないけど、マレビトの学校は大変なんだニャ」  むーっと目をつぶってリンクは言う。  ちょっと大人ぶっているところが可愛らしい。 「ふーん……。ずいぶん甘ったれたところから来たんだね」  てっきり話は聴いていないと思っていたフーカが、後ろからポツリと言った。  これにはスズもカチンときた。  会話や見た目での判断だが、フーカだってきっと自分と同じくらいの歳のはずだ。  ギンコの妹なのだから、仮に一緒に十年程前にこちらの世界に来たのだとしても、当時の年齢はせいぜい四、五歳くらいだろう。  こちらの世界でのびのびと自由に教育されてきた彼女には、日本の小学生や中学生が味わう“学校”や“クラス”というシステムの、閉塞感や束縛感は絶対に解らないはずだ。 「……こっちの人には解らないよ、たぶん」  フーカの事を何と呼んだらいいか迷ったので、こんな言い方になった。
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