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「私たちには、食事としての柑橘類の良さは、これっぽっちも解らないんですけど」
レオナが苦笑しながら「だからレモンはこの人がいる時だけの特別なんです」とスズに説明した。
程よく温かいミルクティーは美味しかった。
猫舌用に少し冷まして飲むのがこちら流なのかもしれない。ギンコも黙ってゆっくりと紅茶を飲んでいる。
「それで、ギン様の本名は、“Angelo・Virga”《アンジェロ・ヴィルガ》ですよスズ様」
ギンコが紅茶を吹き出した。
レオナがお盆でそれがスズとテーブルにかかるのを防いだ。
「なんで勝手に教えるんだよ!!」
咳き込みながら立ち上がってギンコが抗議した。
「別に良いじゃありませんか、知られてまずい話でもないですし。
この世界に数少ないマレビト同士、正直にいきましょう」
「なんだ、“カルボナーラ・カルパッチョス”くらいの面白ネームだったら良かったのに」
スズは小さく呟いた。
そして“アンジェロ”、『天使』だったらそのまんまだな、と、納得しつつもどこか悔しくも思った。
「ホラ、スズも『そのまんまだな』って顔してるじゃないか!
嫌なんだよ小さい頃から女の子みたいって言われてたし!
それに母の名前だって……」
そこまで言うと、むーっと目をつぶって、椅子にどっかりと座り込んだ。
そして「本当にレオナのいれてくれるお茶は最高だよね」と、何事もなかったかのようにカップの中に残った紅茶を飲み始めた。
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