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「はいはい! メルーの特製ミートパイも焼きあがりましたよ!! 私も褒めてください、ギン様♪」
ややどっしりとした丸ごとのミートパイがテーブル上にどしんと、重さによりほとんど叩きつけられるように置かれた。
「うん、メルーの料理もいつも本当に美味しいよね」
ギンコが穏やかに笑った。
「私だってちゃんとレシピ通りに作ってるのに、なぜか私のより美味しいのよね……」
レオナがほんの少し悔しそうに言った。
「だから、食材は季節によって味も質も違うんだから、そこは加減しなきゃ! レオナは杓子定規すぎるのよ」
メルーがちょっと勝ち誇るようにして言った。
「でもボクは、レオナがきちんと正確に調合してくれたお茶も好きだよ」
ギンコが自然な口調でフォローし、レオナはまんざらでもないという様子で頷いた。
スズは、(女性とはこういう風に扱うものなのか)と、変なところで感心した。
それからメルーとレオナも席につき、たわいもない話をしながら食事をはじめた。
スズの方から何か聞く予定だったはずだが、逆にほとんどがメルーやレオナからの質問攻めという形になってしまった。
二人とも女性らしくよく笑い、スズを見るのが本当に楽しそうだ。
ミートパイは、外はカリカリ、中はトマトソースベースにチーズがたっぷりトロリと入った、お世辞抜きでスズが今まで食べたパイの中で、一番美味しいものだった。
地球でも同じ食材があるのかは解らないが、玉ねぎやニンニクなどの代わりに、独特の風味の野菜や調味料も使われているようだ。
これだけでもかなりお腹がいっぱいになったが、「ではデザートとお茶のお代わりをお持ちしますね」と、メルーとレオナが食器を片付けて席を立って行った。
そうして二人の姿が店の奥に見えなくなると、「これからも色々ちょっかいを出されるかもしれないけど、許してあげてね?」とギンコがスズに囁いた。
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