【第二章:スズと風のサーカス団シルフ 一】

6/6
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
「え?」 「ホラ、あっちの世界でもあるでしょ、女の子が子猫とか子犬とかを見ると、『かーわーうぃーうぃー!!』みたいな。あれと同じなんだよ。  子供たちが動物園でライオンの赤ちゃんを触らせてもらって大騒ぎ、みたいな。  ボクもこっちに来た時は小さかったから、そりゃもう最初はもみくちゃにされたものだったけど……。  ボクらなんてこっちの世界のみんなからしたら『しゃべるホワイト子ライオン』みたいなものだからね。まあある程度は仕方ないというかなんというか」  ある意味生まれて始めて女性にモテていたような気分を味わっていたスズは、やや落ち込んだ。  地下三メートル、いや三ニャントスほど。 「大丈夫だよ、慣れてくれば、どういうタイミングで仮面をつければ良いのかも解るし、どう振舞えばマレビトに見えないかとかもちょっとずつ教えてあげるから」  かまわれる事にげんなりしているのかと勘違いしたギンコが励ました。  するとどこからともなく、そんなスズの複雑な心理状態にぴったりの奇妙な曲が聞こえてきた。  少し物悲しいような、懐かしいというよりは、何か思い出しそうだがどこか調子はずれというか、夢の中で奇妙に捻じ曲がった子供の頃の思い出のような、そんな感傷に近い気持ちが湧いてくる曲だった。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!